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From: SHIOYA Makoto 
Date: Tue, 02 Feb 1999 17:09:57 +0900
Subject: Acol #15 [BR]

エコールシステム入門−その15


第2部 競り合いのビッド


 本文を始める前に塩谷の独り言を。

 これを書く種本になっているリースの本は1961年の出版で、もうかれこれ40
年にもなる。しかし、ここまではエコールの真髄とでも言うようなビッドが随
所に飛び出し、読んでいて面白いし勉強にもなった。古くはあるが、重要な古
典をひもとくということで大変ためになる感じであった。
 ただ、この第2部からはどうなんだろうか。競り合いのビッドに関しては色
々なコンベンションが発達したし、LOTTのような考え方も出てきている。以下
を読んでいただければわかるが、「ちょっと古臭くて、どうもネエ」と感じら
れる方も多いことだろう。しかし、ところどころタメになる考え方も出てくる
し、古臭いところをどのように取捨選択して良いか私には判断つきかねるとこ
ろが多いので、リースの本を大部分そのままご紹介することにしよう。あまり
に古臭い部分、例えばノンバルでダブルされダウン4は700点の失点などとい
うところは割愛するとして。
 これは古臭すぎる、これは現代にも通用する、といったことを私とエコール
で組んでいる坂本氏を始めとして成田君や萩原君などの識者の方々にどんどん
指摘していただくことを期待したい。



<オーバーコールとプロテクション>
 オーバーコールとディフェンスの戦術は、競り合いの無いビッドでは仔細な
点まで果てしなく議論するペアでさえ、しばしば無造作に扱っている。しかし、
力の均衡したチーム間の試合でスイングを生み出すのはちょっとした競り合い
のハンドなのである。


1 1レベルのオーバーコール
(a)バルネラブル
 バルのオーバーコールは不利なスコアの対象である。最低の基準は確実な4
プレイングトリック、もしくは見こみありそうな5プレイングトリックである。
次のハンドはボスバルで1Cに対するミニマムのオーバーコールである。

(1)A83 62 AK942 854
(2)94 AKJ9 KJ76 852
(3)QJ9643 92 A8 965

 (1)ではプレイングトリックは確かではないが、代償としてAKとAがあ
る。相手がノンバルであれば、ゲームの代償として800点失う悲劇を招くかも
しれないからオーバーコールはやや危険であろう。
 (2)のハンドは4枚しかなく、あえてオーバーコールするには弱く、「確
実な4トリック」という基準に合致しないことも認めざるを得ない。オーバー
コールに不適当と主張するプレーヤーも多いだろう。しかし、次のようなこと
も考慮しなければならない。パートスコアを争うに十分な強さを味方が持つ可
能性がある。今オーバーコールする方が、パスして例えば1NTレスポンスを
ダブルしてリオープンするより安全で良いビッドであることは間違い無い。リ
オープンのダブルが500点獲得する方法であるが、同時に1NTダブル1アッ
プして380点という不愉快な失点への道でもある。
 (3)のハンドはハイカードが不足だが、プレイングトリックがあり、スー
ツがスペードということからプリエンプトする価値がある。

(b)ノンバル
 1レベルのノンバルのオーバーコールの最低限度について検討すべき問題は
次のとおりである。

 1 ハンドが味方に「属している」十分な成算があるか? つまり、コント
ラクトを達成できるか、ペナルティを獲得できそうか?
 2 割に合うサクリファイスを見越せるハンドか?
 3 パートナーのリードの時、オーバーコールしたスーツは良いリードとな
りうるか?
 4 ビッドはオポーネントの障害となるか? 相手のビディングスペースを
奪うか?

 例を挙げて見てみよう。

  AQ73 62 742 853

1C、1Dのいずれにも1Sとオーバーコールする。プレイングトリックは
ほとんど無く、1レベルでもかなりのペナルティを被る可能性があることは事
実である。このビッドの利点は次のプレーヤーが1レベルレスポンスする機会
を奪うことである。更にスペードのストッパーを欠いて1NTビッドを防ぐか
もしれない。

  5 J974 AKJ3 10642

このハンドで1Cに1Dオーバーコールする理由は全く異なる。この時点で判
断する限りでは、メジャースーツのコントラクトに対してはディフェンスの見
込みがあり、オポーネントの警戒すべきゲームは3NTである。1Dとビッド
することによって3NTをさえぎることができるかもしれない。相手は4枚し
かないことを知ることができない。

  K10642 5 QJ43 762

このハンドでも1Cに対し1Sオーバーコールをしてみる。1Hに対しては、
オーバーコールしてもビディングスペースを奪わないが、相手がバルならばオ
ーバーコールする。これは、バルに対するノンバルのサクリファイスが非常に
有利にスコアができているからである。
 以上で述べたオーバーコールについて、「まだ、パートナーがパスしていな
ければ」という条件をつけなかった。むしろ反対に、パスしたパートナーに対
してのほうが自由に振舞うことができる。これは、まだパスしておらずオーク
ションに参加することを嫌うかもしれないパートナーよりは、既にパスしたパ
ートナーに対して3番手でプリエンプト・オープンを自由に行えるのと同様で
ある。
 一方、パートナーがパスしたということがオーバーコールを無意味とするこ
とがある。

  Q8 Q72 KJ965 A42

ひどく悪いハンドというわけではなく、右手がディーラーで1Cオープンした
のなら1Dオープンするのも悪くはない。しかし、パートナーがパスした後で
はビッドするのは無意味である。コントラクトを買い取る可能性はほとんどな
く、オーバーコールはオポーネントがカードの位置を当てるのを助けるだけで
ある。
 プレーする可能性が高くないと判断した時は、オークションに全く参加しな
いほうが有利となることがしばしばある。意外にも一人のディフェンダーに点
数が全部固まっているとデクレヤラーはプレーを誤ることが多い。

  AQ864 Q105 A6 Q64

左手の1Cオープン、右手の1Hレスポンスに対して、バルか否かにかかわら
ずパスする。1Sとビッドするのは賢明とは言いがたい。点数はあるが、絵札
がばらつきすぎていてプレイングトリックに乏しく、相手に不必要に情報を与
える不利が大きすぎる。


2 2レベルのオーバーコール
 2レベルはノンバルでもペナルティダブルの危険ははるかに大きい。1レベ
ル高くなっている事実だけでなく、他に良いビッドが無いという理由でオポー
ネントは頻繁にダブルをかけてくる。このような理由から2レベルのオーバー
コールは慎重に行わなければならない。

  J64 96 A8 KJ9752

これは2レベルのオーバーコールには不十分なハンドであるが、ノンバルでは
1Dオープンに対しては危険を冒して2Cとオーバーコールしたい。500点失
点するかもしれないが、2Cとビッドすることによりチェスで言うところの位
を獲得し、1H、1Sレスポンスを防ぐことができる。
 オープンが1Sであればこのような利点はもはやない。2Cが締め出すビッ
ドは1NTしかなく、結局パスしたほうが良い。

  95 Q73 AK764 A52

繰り返すまでも無いが、1H−1Sに対してオーバーコールするようなハンド
ではない。簡単に300点や500点失ってしまう反面、どのようなゲームコントラ
クトに対してもディフェンスがあるからサクリファイスとはならない。
 両方のオポーネントがビッドしている時、オーバーコールするか否かの問題
は主として予想されるカードの配置にかかわる。

  83 AQ1085 A7 K764

双方ノンバルで、左手が1C、パートナーパス、右手1Sとオークションが進
行した。コントラクト奪取をめざして2Hとビッドするのは判断が悪い。カー
ドの配置は味方に悪くオポーネントに都合が良い兆候が明らかだからである。
2Hにダブルをかけられると、左手はスペード、右手はクラブが短く、クロス
ラフされ、更にクラブKは最初から死ぬ運命にある可能性が高い。
 左手が1S、右手が2Cというシークエンスであれば、ハートでプラススコ
アの展望ははるかに高い。実際、3Hにレイズされれば4をビッドすることも
できる。


3 オーバーコールに対するレスポンス
 今まで述べてきたノンバルのオーバーコールが大胆と思われるプレーヤーは
レスポンスを適当に再調整する必要があろう。弱い戦術的オーバーコールを危
険を冒して行ったところ、パートナーがオープニングビッドに対するレスポン
スとしても不十分な強さで2NTに突入すること程いらだたしいことはない。


4 バランスハンドでのレスポンス
 役に立ちそうなハンドでは、「パートナーのオーバーコールは少しは建設的
なものか、それとも弱いオーバーコールだろうか」ということを考慮すべきで
ある。
 前節の分析から1Dに対する1Hのようなオーバーコールは何らかの建設的
目的を持つことは明らかであろう。しかし、1Cに対する1Sは耳を傾ける必
要も無い弱々しいつぶやきにしかすぎないかもしれない。後者のオーバーコー
ルへのレスポンスは、4番手のバランシングビッドに対してとほぼ同様のレス
ポンスを行うべきである。すなわち、11-13点で1NT、14-15点で2NTをビ
ッドする。
 パートナーが弱いはずはないオーバーコールをした時は、1NTの基準はノ
ンバルで10-12、バルで9-11である。しかし、絶対の基準ではない。パートナ
ースーツとのフィットや敵のスーツの持ち具合がはるかに重要である。

  A92 J1073 J83 AJ6

双方バルでオークションが次のように進んだ。

(1)1C 1D P ?
(2)1S 2D P ?
(3)1H 2D P ?

 最初のシークエンスでは1NTの上限である。
 2番目のシークエンスではパートナーは2レベルでオーバーコールしたから
より多くを期待できる。2NTをビッドするが、スペードは不経済な持ち方で
あるからこれ以上はビッドすべきでない。スペードの4点は恐らく十分な価値
を発揮しないだろう。
 (3)は3NTをビッドできる。1点しかないが確実なストッパーというオ
ポーネントスーツの持ち方が良いからである。


5 オーバーコールのレイズ
 バルとノンバルのレイズには違いがある。バルでは強さに基づいてサポート
する。つまり、1Sオーバーコールを2Sにレイズする場合、このコントラク
トがメイクすることを期待している。ノンバル、特にオポーネントがバルの時
は、パートナーが口火を切った方針を更に押し進めてプリエンプトとしてレイ
ズするのが良い戦術である。


6 スーツテークアウト
 スーツテークアウトはフォーシングとはならず、従ってかなりしっかりとし
たスーツでなければならない。ダブルレイズする強さがある時にぐずぐずスー
ツテークアウトするのは間違いである。
 ジャンプシフトは1ラウンドフォーシングである。オポーネントスーツのキ
ュービッドはリミットレイズのハンドまたはそれより良いハンドを保証する。


7 ジャンプオーバーコール
 エコールにおいてジャンプオーバーコールはインターミーディエイトである。
原則として6枚のワンスーターとおよそ3クイックトリックを保証する。

  AKJ742 A85 6 QJ4

1C、1D、1Hオープンに対して2Sとオーバーコールする標準的なハンド
である。これより強くなれば、ダブルしてからスペードをビッドする。


8 ジャンプオーバーコールに対するレスポンス
 良い7点(例えばA、K)があればビッドを続けるよう努力すべきである。
トランプ以外に十分なトリックがあれば、小さな2枚もしくはアナーシングル
トンは十分なサポートとなる。
 スーツテークアウトは1ラウンドフォーシングである。

  Q542 8 AQ10763 92

1Cオープンにパートナーが2Hとジャンプした時、3Dとビッドする。これ
に対しパートナーが3Hしかビッドしなければパスする。
 キュービッドはオポーネントのスーツに特定のカードを持つことを保証する
わけではなく、単にゲームまでビッドしたいがベストコントラクトが不明であ
ることを示すにすぎない。


9 NTのオーバーコール
 そこそこのバランスハンドでオーバーコールするのは良い戦術とは言い難い
から、1NTオーバーコールは15-18の良いハンドを持つべきである。

  Q6 K106 Q95 AKJ102

1Hに対して2Cより1NTの方がより建設的である。


10 バランシング
 これは、低いレベルのビッドが二回パスされた後リオープンする場合に使わ
れるアメリカで使われる言葉である(英国ではプロテクティブビッドと呼ばれ
る)。

  Q1095 82 975 AQ54

1Dオープンが流れてきた時に1Sでリオープンする最低の例である。スペー
ドとハートが入れ替わっていれば、リオープンは間違いとなるかもしれない。
スペードは常に「選ばれた」スーツであるが、このような状況では特に価値が
高い。
 このハンドでオープンが1Dでなく1Cであればパスすべきである。二つの
要素が絡んでくる。一つはオポーネントが悪いスーツでプレーすることになる
可能性、もう一つはオポーネントスーツが明らかに弱いパートナーがパスした
事実がパートナーがあまり良いハンドでは無いことを示唆していることである。
 1レベルのスーツのリオープンの上限はおよそ13点である。これ以上あれば、
ダブルをかけるか良いスーツならジャンプする。

  A7 KQ9853 Q103 84

1C、1Dオープンが流れてきたら2Hにジャンプする。
 1NTのリオープンは12-14である。特にメジャースーツに対しては弱いこ
ともある。

  J52 A93 AQ87 942

左手が1Sオープンし、パスが二つ続いた。パートナーは良いハンドでもビッ
ドできなかった可能性が高いから1NTとビッドすべきである。Jxxは、リ
オープン1NTの絶好の基盤である。パートナーがAxxかKxxでも持って
いれば左手にリードさせることは有利となる。マッチポイントではxxxでも
1NTをビッドすることさえある。この理由は、(a)アナーがうまく位置し
ていて1NTがベストコントラクトであるかも知れず、(b)オポーネントが
いきなり4〜5トリックを取っても1NTで良いスコアが取れるかもしれない
からである。
 テークアウトダブルに関しては次回に検討する。

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玉川事業所

記録技術研究所
記録技術研究企画課

塩谷 真 salt@csp.canon.co.jp

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